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再エネ比率、上積み焦点、脱炭素の新目標策定へ、政府全体で後押し不可欠

2021/03/23  日本経済新聞 朝刊  5ページ

新しい温暖化ガス削減目標の設定では、発電量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年度までにどこまで上積みできるかが大きな焦点になる。発電部門は日本の二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める。原子力も含めた「脱炭素電源」の比率を高めることが、削減目標の深掘りには欠かせない。(1面参照)

今夏にも新しい電源構成を策定する経済産業省は22日までに、再生エネ比率の新目標について経済団体や事業者にヒアリングを実施した。経済同友会は30年に40%、再生エネ導入に積極的な大手企業が集まる日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は最低で約50%を目指すべきだと主張。足元の18%や今の政府目標である22~24%から大幅な上積みを求めた。

40~50%に引き上げる道のりはまだ見通せない。課題の一つが設置場所の制約。森林を除いた平地などの単位面積あたりの再生エネ発電量をみると日本はすでに世界最大になっている。

12年に始まった再生エネ電力を固定価格で買い取る制度(FIT)のもとで狭い国土に急速に導入した結果、事業者と地元住民との摩擦も目立つ。条例で設置を禁止する自治体も増え、新規案件の障害になっているとの声が事業者からあがる。ヒアリングで同友会は「(40%を目指す上での手段は)検討している最中」などとし、有識者から「裏付けがあってこその目標提示だ」などと指摘が出た。

家計や企業の負担も課題だ。FITの買い取り費用は20年度見込みで既に3・8兆円に上り、標準的な家庭で月800円弱を負担する。意欲的な再生エネ目標を示す経済団体側も一層の負担増には消極的だ。

ここ数年の導入量から見積もると、再生エネの比率はこのままだと「30年に3割に届くかどうか」(経産省幹部)という。

上積みには政府全体で普及を後押しすることが重要になる。農地の転用では農林水産省、環境アセスメントの効率化では環境省の役割が大きい。特に重要なのが住宅・建築物を所管する国土交通省だ。家庭部門は日本の排出量の15%を占める。住宅の省エネや再生エネ設備の設置を促す取り組みの強化が必要になる。

 

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