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SDGs推進、企業人の心得

(大機小機)2021/03/16  日本経済新聞 朝刊  21ページ

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が日本社会に定着してきた。最近では小中学校の教科書に取り上げられている。国連加盟国が2015年に採択したアジェンダは17の目標を掲げている。

目標を達成するために、企業人としてとりわけ留意すべきことが3つあると思う。

まず、SDGsの本質についてだ。SDGsは余剰利益の再配分ではなく企業活動全般を通じて実現すべき目標である。メセナやCSR(企業の社会的責任)との違いだ。利益から拠出するのではなく、売り上げや経費のなかで生み出していきたい。企業が収益活動を活発に行うほど目標に近づく、という発想だ。

次に、経営者にとって「169のターゲット」を熟読することが有益だ。17の目標を細分化し、各論に落とし込んだ内容だ。高い経済生産性や技術革新、インフラ整備や研究開発費の増加を掲げ、観光業や金融サービスなど個別産業にまで言及している。理念が見える化されているので企業は具体的な対応策を煮詰めやすい。

そして3つ目にして最も重要な点が、地球との共生だ。気候変動対策やクリーンエネルギーの増進は当然のこと、貧困・飢餓の撲滅やジェンダー平等の実現もこれと深い関係がある。一つしかない地球を豊かにしなければ、貧困・飢餓は無くならないし、ジェンダーを超えた人々の活躍なしに、地球社会のバランスは保てない。

SDGsはブランド・マーケティングの有力な手段としても注目されている。多くの企業が、SDGs活動を強調して企業イメージを上げようとする。投資面からは環境、社会、ガバナンスを重視したESG投資が叫ばれる。ブランド戦略として活用するのは有益だが、その本質は宣伝ではないことに留意したい。

SDGsの根底には地球の存在に対する切迫した危機感がある。これこそが17の目標すべてに共通する源だ。これみよがしの宣伝とは無関係だろう。SDGsを時にビジネスのネタにする動きがみられる。その商魂には脱帽するが、違和感も覚える。

地球の歴史を1カ月のカレンダーに置きなおすと、現人類は、その最終日の最後の5分間に誕生したにすぎない。この事実を謙虚に捉えることがSDGsの原点ではないだろうか。(鵠洋)

 

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