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再生エネ「50~60%」 政府検討50年、海外水準を目安に

2020/12/21 日経新聞 朝刊 一面

政府は2050年時点の発電量に占める再生可能エネルギーの比率を「50~60%」に高める案を検討する。温暖化ガス排出の実質ゼロを実現するため、近くまとめる実行計画に参考値として明記する方向だ。欧州諸国などはすでに再生エネの比率が4割近い。海外と遜色ない高い水準を目安とし、企業や家計を巻き込んだ議論を促す。(関連記事3面に)

50年時点の電源構成について、海外では英国が「再生エネ65%」などの数値目標を示している。30年先の電源構成を具体的に議論している国は少ない。日本は「再生エネ50~60%」について現時点では「温暖化ガス排出実質ゼロ」のような目標値とはせず、実行計画の議論を深めていくための参考値として扱う見通しだ。

日本の電源構成に占める再生エネの比率は19年度の速報値で18%にとどまっている。再生エネの導入が進んでいる欧州ではドイツが42%、英国39%と高い水準にある。日本は原子力発電所の再稼働が進まず、石炭や液化天然ガス(LNG)など火力の割合が8割近くに達している。

再生エネのうち、特に普及の可能性が高い電源として洋上風力を位置づけ、導入を促すための目標設定や制度改正について実行計画に盛り込む。

欧州では域内に張り巡らされた送電網を使い、各国が電力を融通し合う体制があることが再生エネ拡大を後押ししている。海に囲まれた日本で同様の仕組みは難しいため、長距離を効率的に送電できる「直流送電」の導入や、国内送電網の増強策などを実行計画で打ち出す。出力が安定しない再生エネの欠点を補うため高性能な蓄電池の国内生産体制の整備も促す。

洋上風力のコストについては35年までに、風力発電機を海底に設置した基礎に固定する「着床式」で世界平均とほぼ並ぶ1キロワット時あたり8~9円を目標とする。

2020/12/21 日本経済新聞 朝刊 3面 「実質ゼロ」へ意欲的数値、再生エネ拡大、国民的議論を喚起。

政府が2050年に再生可能エネルギーの比率を「50~60%」に高めることを目安に掲げるのは、意欲的な数値を示すことで国民的な議論を深める狙いがある。「50年に温暖化ガス排出を実質ゼロ」という政府目標の実現に向けて、先行する海外諸国と遜色ない水準を議論の土台とし、技術的な課題などが山積する局面の打開をめざす。(1面参照)

「温暖化ガス排出実質ゼロ」の実現には、二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める発電部門の脱炭素化が欠かせない。日本の再生エネ比率は足元で2割に満たない。海外の先行事例などからみて「50~60%」は現在の技術で想定できるぎりぎり現実的な水準とみられるが日本の現状からみればかなり高い水準となる。

現状では目標値とせず、参考値として扱う方向だ。欧州では再生エネ比率がすでに4割を超える国も多く、国際水準を意識した議論を進めるための目安とする。再生エネの普及には発電場所から工場や住宅に電気を届けるための送電網、不安定な出力を補う高性能な蓄電池の開発など体制整備や技術革新が欠かせない。政府は月内にまとめる実行計画でこうした普及策の総動員を訴える。

日本は再生エネ設備の大量設置に適した遠浅の海岸や広大な平地が乏しい。専門家の間では最終的に50%前後の導入が限界との見方がある。「温暖化ガス排出実質ゼロ」を実現するためには、CO2を貯留・回収する機能を備えた火力発電や燃やしてもCO2を出さない水素発電の整備、原子力発電の再稼働を同時並行で進める必要がある。来夏にもまとめる次期エネルギー基本計画で政府はまず30年時点の電源構成を示す。

 

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